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ANALYSIS
外部資金獲得に関する生産性の分析



1.「見える化」の目的

我が国の経済成長の源泉であるイノベーションを継続的に生み出すためには、産学連携機能のパフォーマンスの「質」を評価し、発展途上にある大学等の自主的な活動改善の活性化を促すことが不可欠である。
国立大学、研究開発法人等が、法人経営力を高めつつ外部資金の獲得能力を向上していくことを後押しするため、各機関における産学連携体制へのリソース投入状況と外部資金獲得状況の関係性の見える化を実施した。

2.「見える化」の手法


2.1. 調査手順

下記の手順に従って、内閣府「産学連携活動マネジメントに関する調査」(以下、本調査)を実施しデータを収集した。

図表1 調査の実施方法
調査の実施方法

2.2. 調査対象機関

本調査の対象は、産学連携活動に取り組む国内の大学、承認TLO、および自ら研究開発を行う独立行政法人(以下、「研究開発法人」)である。本調査で調査対象とした機関は以下の通り。

図表2 「外部資金獲得に関する生産性の分析」調査対象機関
「外部資金獲得に関する生産性の分析」調査対象機関

2.3. 調査・分析の対象年度

本調査では、2019年度の実績を収集した。これに、2019年度「産学連携活動マネジメントに関する調査」(以下、「昨年度調査」)で収集した2016~2018年度の実績、ならびに、経済産業省「産業技術調査事業(産学連携活動マネジメントに関する調査)」(以下、「経産省調査」)で収集した2015年度実績を加え、2015年度~2019年度の5年分のデータをもとに分析を実施した。


2.4. 調査実施体制

本調査は、内閣府(科学技術・イノベーション担当)から野村総合研究所(NRI)が委託を受け、一部業務を大学技術移転協議会(UNITT)に発注し、実施した。

図表3 事業実施体制

調査実施体制

2.5. 調査項目の検討・調査票の作成

「各機関における産学連携体制へのリソース投入状況と外部資金獲得状況の関係性の見える化を実施する」という目的に照らして、昨年度調査ならびに経産省調査の調査項目をベースに、各機関における産学連携活動の状況に係る基礎的な情報を、一定程度まで網羅的に把握できる調査となるように、調査項目を検討した。
調査項目の検討にあたっては、各機関の回答負荷を可能な限り軽減するべく、一部の調査項目は文科省調査に準拠し、同調査に回答している場合は、省庁間でデータを共有することとした。また、大学や研究開発法人に対して、昨年度調査の回答負荷の高さや新たな調査項目の妥当性に関してヒアリングを行うことで、調査項目のブラッシュアップを実施した。
なお、文部科学省・経済産業省が策定した、「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」における資金の好循環の視点に基づき、外部資金・間接経費の獲得状況についても本調査の中で把握した。

本調査では、大学、承認TLO、および研究開発法人のそれぞれに調査票を配布し、実績を回収した。実際の調査票については以下を参照。


2.6. アンケート調査の実施(調査票の送付・回収)

本調査は2020年8月28日に調査票を配布し、同年10月9日を提出締切として実施した。一部機関については、同提出締切までには提出が無かったが、その後督促等を行った。その結果、図表2に示す機関から回答を受領した。


2.7. 問い合わせ対応

本調査に関連する問い合わせはメール・電話にて受け付け、対応を行った。

3.「見える化」の結果

本調査および経産省調査で得られた各機関の産学連携評価指標データに基づき、各種産学連携評価指標データをどのように組み合わせて分析し、その結果をどのように読み解けば良いかについて、その一例を紹介する。

以下に、産学連携機能の質の「見える化」を分析するにあたっての基本的な考え方、および分析結果に関する留意点等を示す。

1)産学連携機能の質を可視化するための視点

産学連携機能の質を「見える化」するにあたっては、特許保有件数あたりの特許権の活用による収入、企業等との共同・受託研究件数あたりの研究契約額、地域貢献度、海外との連携度等、他にも数多くの視点が考えられるが、各機関が目指す産学連携活動の目標に応じて着目すべき視点が異なる。また、各機関の産学連携に係る得手・不得手により、ある視点において強みを発揮している機関が、他の視点においても同じように強みを発揮しているとも限らないため、各視点別に「見える化」を行い、高い成果を挙げている産学連携機能の分析結果や産学連携に係る取組内容を横展開していくことが重要である。

このように、産学連携機能の質の「見える化」を行うための視点は多種多様であるものの、産学連携活動という形での大学・研究開発法人の知の社会への還元は、①特許権に基づく技術移転活動、②その他の知的財産権に基づく技術移転活動、③企業等との共同研究・受託研究、の3つが代表的なものとして考えられる。したがって、本報告書では、これら3つの方法に関する視点から産学連携機能の質の「見える化」を行った。

2)産学連携活動のパフォーマンスの見方

大学・研究開発法人の規模に関する指標値(特許保有件数、技術移転関連や共同・受託研究関連に要した人件費等)を横軸に設定し、産学連携活動の成果に関する指標値(特許権の活用による収入、民間企業との共同・受託研究の契約件数や契約額等)を縦軸に設定して、各機関の指標値の状況を散布図上にプロットすることにより、プロットされた機関全体における各機関の位置付けが分かるように示している。

各機関の産学連携活動をパフォーマンスの観点から分析するためには、各機関の産学連携活動の成果に関する指標地(縦軸上の値)ではなく、各機関の位置を示した点と原点を結んだ直線の傾き(縦軸上の値/横軸上の値。以下、「傾き」)により、各機関の規模感を踏まえた評価を行うことが重要である。本報告書に掲載した各散布図には、散布図上にプロットされている全機関の平均線(全体平均)を表示しており、これが自機関の産学連携活動のパフォーマンスが他大学と比べて優れているかどうかを判断するための目安となる。

3)本調査における分析についての留意点等
① 技術移転、共同受託研究活動に関する費用

人件費を考慮した特許権に基づく技術移転活動のコストパフォーマンスおよび共同・受託研究活動のコストパフォーマンスについては、それぞれ、産学連携部門の人件費総額に基づいてではなく、技術移転関連に要した人件費および共同・受託研究関連に要した人件費について、各機関が算出した値に基づいて分析を行っている。
また、特許権に基づく技術移転活動に関して、外部TLOを活用している大学としていない大学のパフォーマンスを横並びで比較するため、外部TLOにおける人件費・特許関連経費のうち各提携大学分に係る値を、当該提携大学の技術移転成果および人件費・特許関連経費に合算している。このとき、複数の大学と提携している外部TLO(広域型TLO)については、各提携大学への寄与度に応じて技術移転成果および人件費・特許関連経費を各提携大学別に案分し、その値を各提携大学の値に合算している。

② 本調査の「中小企業」、「大学発・法人発ベンチャー企業」の定義

本調査における「中小企業」は、国内の企業のうち、「中小企業基本法」(昭和38年法律第154号)第2条に定める「中小企業者」を指す。具体的には、下記の資本金又は従業員数のどちらか一方を満たせば対象となる。

図表4 事業実施体制

中小企業、大学発・法人発ベンチャー企業の定義

また、「大学発・法人発ベンチャー企業」とは、以下のいずれかの条件にあてはまる企業を指す。大学については、経済産業省が設立状況を調査して把握した大学発のベンチャー企業のリストを各大学に送付し、その企業に関する回答を収集した。また、研究開発法人については、以下の条件を満たす企業を整理してもらい、その企業に関する回答を収集した。

1 研究成果ベンチャー
大学・研究開発法人で達成された研究成果に基づく特許や新たな技術・ビジネス手法を事業化する目的で新規に設立されたベンチャー
2 共同研究ベンチャー:
創業者の持つ技術やノウハウを事業化するために、設立 5 年以内に大学・研究開発法人と共同研究等を行ったベンチャー
3 技術移転ベンチャー:
既存事業を維持・発展させるため、設立5年以内に大学・研究開発法人から技術移転等を受けたベンチャー
4 学生ベンチャー:
大学・研究開発法人と深い関連のある学生ベンチャー
5 関連ベンチャー:
大学・研究開発法人からの出資がある等その他、大学・研究開発法人と深い関連のあるベンチャー

③本調査における分析結果での機関名表記

機関名を公表しないことを前提に産学連携評価指標データを収集しているため、本一般公開サイトでは、各結果において機関名は開示していない。一方、自機関よりパフォーマンスが優れている機関の取組事例等を参考にし、産学連携活動の改善を行うためには、各機関の実名を表記したデータが必要になる。そのため、本調査に協力した機関には、別途、各機関の実名を表記したデータを可視化分析ツールで確認できるようにしている。


3.1. 特許権に基づく技術移転活動(2019年度実績)

本調査の最終的な受領データ、および文科省調査の結果をもとに、特許権に基づく技術移転活動に関する分析結果を示す。


3.1.1. 特許保有件数と実施許諾・譲渡した特許権利数の関係

図表5は、各機関の特許保有件数あたりの実施許諾または譲渡を行った特許権利数の状況を散布図で示したものである。これを見ると、各機関の傾き(実施許諾または譲渡を行った特許権利数/特許保有件数)の大きさがばらついていることが分かる。

図表5 「特許保有件数」と「実施許諾または譲渡した特許権利数」との対比
「特許保有件数」と「収入に結びついた特許権利数」の対比

*特許保有件数が他機関に比して大きく異なる機関のプロット(10,310 ,3,054)は除いて図示し、個別分析では表示


3.1.2. 特許保有件数と実施許諾・譲渡した特許権収入の関係

図表6は、図表5の縦軸を「特許権の活用による収入(特許権の実施許諾または譲渡による収入)」に替えたものである。図表6において、各機関の傾き(特許権の実施許諾または譲渡による収入/特許保有件数)の大きさがばらついていることが分かる。特に、特許保有件数1,000件超の機関において、その傾向が顕著である。

図表6 「特許保有件数」と「特許権の活用による収入」との対比
特許保有件数と実施許諾・譲渡した特許権収入の関係

*特許保有件数が他機関に比して大きく異なる機関のプロット(10,310 ,619,131)は除いて図示し、個別分析では表示

次に、特許権の活用による収入を、特許権の実施許諾収入と譲渡収入に分解して比較した。図表7は、図表6の縦軸で示した「特許権の活用による収入」を、さらに実施許諾収入と譲渡収入に分解して示したものである。これを見ると、図表6で傾きが大きい機関は、「特許権の活用による収入」の多くを実施許諾により得ていることが分かる。

図表7 「特許保有件数」と「特許の実施許諾(左)/譲渡(右)による収入」との対比
「特許保有件数」と「特許の実施許諾(左)/譲渡(右)による収入」との対比

*特許保有件数が他機関に比して大きく異なる機関のプロット(左図は(10,310 ,595,436)、右図は(10.310 , 23,695))は除いて図示し、個別分析では表示


3.1.3. 特許権の実施許諾・譲渡による一件あたり収入

以降では、図表6で、特に傾き(特許権の実施許諾または譲渡による収入/特許保有件数)の大きさにばらつきのあった、特許保有件数1,000件超の機関を対象に、各機関の実績および平均値を踏まえた分析を行う。
図表8は、当該機関における特許権の一件あたり実施許諾・譲渡収入を示したものである。これを見ると、パフォーマンスによる一件あたり実施許諾収入の差異は見受けられない。これは、昨年度調査(特許保有件数に対する収入の傾きが大きい機関ほど、実施許諾による一件あたり収入が大きい傾向にあった)とは、異なる結果である。
一方、一件あたり譲渡収入が大きい機関はあるが、特段の傾向は見られず、また譲渡した特許権利数が、実施許諾した特許権利数に比べて少ないことが分かる。

図表8 特許権の実施許諾(左)/譲渡(右)による一件あたり収入

特許権の実施許諾(左)/譲渡(右)による一件あたり収入

*特許保有件数に対する特許権収入の傾きが大きい順に掲載
*括弧内は実施許諾(左)、譲渡(右)した権利数
*1機関は特許権の譲渡件数が0件のため、データ無し


3.1.4. 実施許諾・譲渡した特許権の単願・共願比率

図表9は、各機関の特許権について、実施許諾した権利数および譲渡した権利数の割合を比較した結果である。これを見ると、特許保有件数に対する収入の傾きの大きさに関わらず、いずれの大学・研究開発法人においても実施許諾した権利数の割合が高いことが分かる。また、平均値で見ると、機関全体の平均(棒グラフ中の線:86.0%)より、特許保有件数1,000件超の機関の方が、概して実施許諾比率が高いことが分かる。

図表9 特許権の実施許諾した権利数と譲渡した権利数の割合

特許権の実施許諾した権利数と譲渡した権利数の割合

*特許保有件数に対する特許権収入の傾きが大きい順に掲載
*括弧内は実施許諾もしくは譲渡した権利数

さらに、図表10は、各機関の実施許諾/譲渡した特許権について、それぞれ単願特許権と共願特許権の割合を示したものである。これを見ると、全体的に、個別の機関同士では特段の傾向の差異は見られないことが分かる。一方、平均値で見ると、実施許諾した特許権の方が、譲渡した特許権より単願比率が高いことが分かる。

図表10 実施許諾(左)/譲渡(右)した特許権の単願特許権と共願特許権の割合

実施許諾(左)/譲渡(右)した特許権の単願特許権と共願特許権の割合

*特許保有件数に対する特許権収入の傾きが大きい順に掲載
*括弧内は実施許諾(左)、譲渡(右)した権利数
*1機関は特許権の譲渡件数が0件のため、データ無し


3.1.5. 特許権の一件あたり実施許諾・譲渡収入(単願・共願別)

前述の図表8では、特許権の一件あたり実施許諾・譲渡収入を示したが、以下の図表11では、更にこれらの収入を単願特許に基づく収入と共願特許に基づく収入に分けて分析する。これを見ると、特許保有件数に対する特許権収入の傾きが大きい機関は、概して一件あたり実施許諾収入が大きく、また、全体として単願による収入が大きい傾向にあることが分かる。単願/共願による収入の大きさに関する傾向は、昨年度調査(単願/共願のどちらの割合が大きいかは、機関により傾向が異なった)とは、異なる結果である。

図表11 特許権の一件あたり実施許諾(左)・譲渡収入(右)(単願・共願別)

特許権の一件あたり実施許諾(左)・譲渡収入(右)(単願・共願別)

*特許保有件数に対する特許権収入の傾きが大きい順に掲載
*括弧内は実施許諾(左)、譲渡(右)した権利数
*1機関は特許権の譲渡件数が0件のため、データ無し


3.1.6. 特許権の活用による収入・収入平均額の構成比率

図表12は、各機関の特許権の活用による収入の構成比率を示したものである。これを見ると、特許保有件数1,000件超の機関は、一部の機関を除き、実施許諾収入が占める比率が高い傾向にあることが分かる。

図表12 特許権の活用による収入の構成比率
特許権の活用による収入の構成比率

*特許保有件数に対する特許権収入の傾きが大きい順に掲載
*括弧内は実施許諾もしくは譲渡した権利数

続いて、図表13は、特許権の活用による収入の構成比率を、特許保有件数1,000件超の機関の平均、全体平均、特許保有件数1,000件以下の機関の平均で比較した結果である。これを見ると、特許保有1,000件超の機関は、特許保有1,000件以下の機関より実施許諾・単願の割合が高いことが分かる。

図表13 特許権の活用による収入の平均額の構成比率

特許権の活用による収入の平均額の構成比率

3.1.7. 特許権の実施許諾・譲渡による収入の内訳

図表14-1は、各機関の特許権の実施許諾および譲渡による収入の内訳について比較した結果である。これを見ると、主に実施許諾のイニシャルロイヤリティおよびランニングロイヤリティにより収入を獲得していることが分かる。なお、昨年度調査(図表14-2)の結果では、一部機関において株式売買による収入が確認できたが、本調査においては確認できなかった。


図表14-1 特許権の実施許諾関連(左)・譲渡関連(右)収入の内訳(2019年度実績)

特許権の実施許諾関連(左)・譲渡関連(右)収入の内訳

*特許保有件数に対する特許権収入の傾きが大きい順に掲載
*括弧内は実施許諾(左)、譲渡(右)した権利数
*1機関の譲渡関連収入の内訳が無回答のため、個別分析での表示なし

図表14-2 特許権の実施許諾関連(左)・譲渡関連(右)収入の内訳(2018年度実績)

特許権の実施許諾関連(左)・譲渡関連(右)収入の内訳

*特許保有件数に対する特許権収入の傾きが大きい順に掲載
*括弧内は実施許諾(左)、譲渡(右)した権利数
*1機関の譲渡関連収入の内訳が無回答のため、個別分析での表示なし



3.1.8. 大学発ベンチャー企業に対する新株予約権の保有状況

図表15は、大学発ベンチャーに対する新株予約権の保有状況の経年変化を示したものである。これを見ると、一部の大学において、大学発ベンチャー企業に対する新株予約権を保有している企業の数が増加しており、2019年度では、合計57企業の新株予約権を保有していることが分かる。

図表15 大学発ベンチャー企業に対して新株予約権を保有している企業の数(経年変化)

大学発ベンチャー企業に対して新株予約権を保有している企業の数(経年変化)

*調査に回答した大学・研究開発法人のうち、2016年度から2019年度に新株予約権を保有している機関の実績を図示


3.1.9. 特許権の活用による収入のコストパフォーマンス

ここまで特許保有件数に着目して、特許権に基づく技術移転活動のパフォーマンスについて分析してきたが、以降では、技術移転関連に要した費用(技術移転関連に要した人件費と知的財産関連経費の合計額のこと)に着目した、特許権に基づく技術移転活動のパフォーマンスに関する分析結果を示す。

図表16は、特許保有件数あたりの特許権の活用による収入(特許権の実施許諾または譲渡による収入)の大きさを示した散布図と、技術移転関連に要した費用あたりの特許権の活用による収入の大きさを示した散布図を上下に並べて比較したものである。比較にあたっては、一部機関が、上下の散布図において同じ位置になるように、上下の散布図の横軸の縮尺の調整を行っている。

図表16を見ると、例えばある機関は、特許保有件数が多いため上側の散布図(横軸:特許保有件数)では右端側に位置しているが、下側の散布図(横軸:技術移転関連に要した費用)では中央付近に位置している。上下の散布図とも縦軸(特許権の実施許諾または譲渡による収入)は共通であるため、上側の散布図における位置より下側の散布図における位置が左側となる機関は、上側の散布図における傾き(特許権の実施許諾または譲渡による収入/特許保有件数)より下側の散布図における傾き(特許権の実施許諾または譲渡による収入/技術移転関連に要した費用)の方が大きいことになる。このように、上下の散布図を比較することで、機関ごとの傾きに係る順位が変化していることが分かる。ただし、大学が保有する特許の中には維持費がかからないものがあり、特許保有件数の多い大学における特許の維持費が保有件数に応じて高いとは限らない点に留意されたい。

図表16 特許権の活用による収入に関するコストパフォーマンス
特許権の活用による収入に関するコストパフォーマンス

*図中の赤色の矢印(縦方向の点線)は、一部機関が上下散布図で同じ位置になるように上下の散布図の横軸の縮尺の調整を行っていることを表している。
*オレンジ色の矢印は、当該大学の下側の散布図における傾き(特許権の実施許諾または譲渡による収入/技術移転関連に要した費用)が上側の散布図における傾き(特許権の実施許諾または譲渡による収入/特許保有件数)より大きいことを示している。逆に、青色の矢印は、当該大学の下側の散布図における傾きが上側の散布図における傾きより小さいことを示している
*技術移転関連に要した人件費とは、産学連携本部、リエゾンオフィス等産学連携・技術移転を主な業務とする部署において、当該業務に従事する者(派遣社員・有期雇用員を含む)の人件費のうち、技術移転関連の業務に従事する者の人件費である。また、共同・受託契約関連業務との兼務者の場合は、2019年度の全勤務時間のうち、技術移転関連業務と共同・受託契約関連業務に従事した割合を適宜設定し、その割合に応じた人件費としている
*知的財産関連経費とは、知的財産の出願等費用、登録・維持費用、侵害調査・訴訟等費用、実施許諾または譲渡による収入のうち研究者・その他(部局等)に還元した額(発明補償金等)に関して、各機関が実際に負担した額のことを指す
*上図で特許保有件数が他機関に比して大きく異なる機関のプロット(上図は(10,310 ,619,131)、下図は(797,521 , 619,131))は除いて図示

なお、特許権の活用による収入に関するコストパフォーマンスについて、図表16の下側の散布図の横軸(技術移転関連に要した費用)を、技術移転関連に要した人件費と知的財産関連経費に分けて示した結果は、図表17の通りである。

図表17 技術移転関連経費に要した人件費(左図)および知的財産関連経費(右図)と特許権の活用による収入の関係
技術移転関連経費に要した人件費(左図)および知的財産関連経費(右図)と特許権の活用による収入の関係

3.1.10. 技術移転関連に要した費用

技術移転関連に要した費用には、技術移転関連に要した人件費と知的財産関連経費が含まれる。図表18は、特許保有件数あたりの技術移転関連に要した人件費と知的財産関連経費の状況を示したものである。これを見ると、一部の機関では、特許保有件数が多くても知的財産関連経費が抑えられていることが分かる。

図表18 特許保有件数と技術移転関連に要した人件費(左図)および知的財産関連経費(右図)の関係
特許保有件数と技術移転関連に要した人件費(左図)および知的財産関連経費(右図)の関係

 *特許保有件数が他機関に比して大きく異なる機関のプロット(左図は(10,310 , 0)、右図は(10,310 , 797,521))は除いて図示


3.1.11. 中小企業・ベンチャー企業への特許権の実施許諾・譲渡

図表19は、各機関が実施許諾・譲渡を行った特許権のうち、何件が中小企業(大学・法人発ベンチャー企業を含む)に対して実施許諾・譲渡した特許権なのかを示したものである。これを見ると、一部の機関において、中小企業に対する特許権の実施許諾・譲渡が積極的に行われていることが分かる。

図表19 中小企業に対して実施許諾(左図)・譲渡(右図)した特許権の権利数

中小企業に対して実施許諾(左図)・譲渡(右図)した特許権の権利数

また、図表20は、各機関が実施許諾・譲渡を行った特許権のうち、何件が大学・法人発ベンチャー企業に対して実施許諾・譲渡したものかを示したものである。これを見ると、一部の機関において、大学・法人発ベンチャー企業に対する実施許諾・譲渡が積極的に行われていることが分かる。

図表20 大学・法人発ベンチャー企業に対して実施許諾(左図)・譲渡(右図)した特許権の権利

中小企業に対して実施許諾(左図)・譲渡(右図)した特許権の権利数

3.2. その他の知的財産権に基づく技術移転活動(2019年度実績)

ここでは、督促等を含めた本調査の最終的な受領データ、および文科省調査の結果をもとに、その他の知的財産権、具体的には、著作権および有体物(マテリアル)に基づく技術移転活動に関する分析結果を示す。


3.2.1 著作権に基づく技術移転活動

図表21は、著作権の実施許諾・譲渡権利数と、実施許諾・譲渡収入の関係である。これを見ると、一部の機関が、著作権の実施許諾・譲渡により収入を得ていることが分かる。

図表21 著作権の実施許諾・譲渡権利数と実施許諾・譲渡収入との対比
著作権の実施許諾・譲渡権利数と実施許諾・譲渡収入との対比

さらに、図表22は、図表21を実施許諾と譲渡に分けて分析した結果である。これを見ると、著作権の実施許諾による収入が、技術移転活動のほとんどを占めていることが分かる。

図表22 著作権の実施許諾(左)/譲渡(右)権利数と対応する収入との対比
著作権の実施許諾(左)/譲渡(右)権利数と対応する収入との対比

3.2.2 有体物(マテリアル)に基づく技術移転活動

図表23は、有体物(マテリアル)の実施許諾・譲渡権利数と、実施許諾・譲渡収入の関係である。これを見ると、一部の機関が、有体物の実施許諾・譲渡により収入を得ていることが分かる。

図表23 有体物の実施許諾・譲渡権利数と実施許諾・譲渡収入との対比
有体物の実施許諾・譲渡権利数と実施許諾・譲渡収入との対比

さらに、図表24は、図表23を実施許諾と譲渡に分けて分析した結果である。

図表24 有体物の実施許諾(左)/譲渡(右)権利数と対応する収入との対比
有体物の実施許諾(左)/譲渡(右)権利数と対応する収入との対比

3.3. 共同・受託研究活動(2019年度実績)

ここでは、督促等を含めた本調査の最終的な受領データ、および文科省調査の結果をもとに、大学・研究開発法人における産学連携活動の主たる手段の一つである共同・受託研究活動に関する分析結果を示す。


3.3.1 共同・受託研究活動のコストパフォーマンス

図表25は、共同・受託研究関連に要した人件費あたりの、民間企業との共同・受託研究契約額を示したものである。これを見ると、各機関の傾き(民間企業との共同・受託研究契約額/共同・受託研究関連に要した人件費)の大きさがばらついていることが分かる。

図表25 共同・受託研究関連に要した人件費あたりの民間との共同・受託研究契約額

共同・受託研究関連に要した人件費あたりの民間との共同・受託研究契約額

*共同・受託研究関連に要した人件費とは、産学連携本部、リエゾンオフィス等産学連携・技術移転を主な業務とする部署において、当該業務に従事する者(派遣社員・有期雇用員を含む)の人件費のうち、共同・受託研究契約関連の業務に従事する者の人件費である。技術移転関連業務との兼務者の場合は、2019年度を通じた全勤務時間のうち、技術移転関連業務と共同・受託契約関連業務に従事した割合を適宜設定し、その割合に応じた人件費とする。また、「共同・受託研究契約関連業務」には、科研費申請書の代理作成等に従事する時間等は含んでいない
*共同・受託研究関連に要した人件費が他機関に比して大きく異なる機関のプロット(490,496 , 113,508)と(726,909 , 438,185)は除いて図示
*一部の機関は、共同・受託研究関連に要した人件費を0と回答したため、そのまま図示


3.3.2. 共同・受託研究活動のコストパフォーマンス(詳細分析)

前述の図表25で示した、共同・受託研究関連に要した人件費あたりの民間企業との共同・受託研究契約額は、次式のように、①民間企業との共同・受託研究獲得件数あたりの民間企業との共同・受託研究契約額と、②共同・受託研究関連に要した人件費あたりの民間企業との共同・受託研究契約件数の要素に、分解して考えることができる。

共同・受託研究関連に要した人件費あたりの民間との共同・受託研究契約額

図表26は、①民間企業との共同・受託研究獲得件数あたりの民間企業との共同・受託研究契約額(左図)と、②共同・受託研究関連に要した人件費あたりの民間企業との共同・受託研究契約件数(右図)を示したものである。これを見ると、①と②の両方で傾きが大きく、結果的に共同・受託研究活動のコストパフォーマンスが高くなっている機関と、①と②のいずれかでのみ傾きが高くなっている機関が存在することが分かる。

図表26 民間企業との共同・受託研究獲得件数あたりの共同・受託研究契約額(左図)、共同・受託研究関連に要した人件費あたりの民間企業との共同・受託研究契約件数(右図)
民間企業との共同・受託研究獲得件数あたりの共同・受託研究契約額(左図)、共同・受託研究関連に要した人件費あたりの民間企業との共同・受託研究契約件数(右図)

*共同・受託研究関連に要した人件費を0と回答した機関は、傾きが大きい機関としてカウントしない
*右図のうち、共同・受託研究関連に要した人件費が他機関に比して大きく異なる2機関((490,496 , 39)と(720,969 , 217))は除いて図示


3.3.3. 中小企業・ベンチャー企業との共同・受託研究活動

図表27は、各機関の民間企業との共同・受託研究のうち、中小企業(大学・法人発ベンチャー企業を含む)との共同・受託研究が占める程度を、研究契約件数(左図)と研究契約額(右図)で示したものである。これを見ると、一部の機関において、中小企業との共同・受託研究活動が積極的に行われていることが分かる。

図表27 中小企業との共同・受託研究契約件数(左図)と契約金額(右図)

中小企業・ベンチャー企業との共同・受託研究活動

図表28は、各機関の民間企業との共同・受託研究のうち、大学・法人発ベンチャー企業との共同・受託研究が占める程度を、研究契約件数(左図)と研究契約額(右図)で示したものである。これを見ると、一部の機関において、大学・法人発ベンチャー企業との共同・受託研究活動が積極的に行われていることが分かる。

図表28 大学・法人発ベンチャー企業との共同・受託研究契約件数(左図)と契約金額(右図)

大学・法人発ベンチャー企業との共同・受託研究契約件数と契約金額

3.4. 2015年度~2019年度実績に基づく経年分析の結果

ここでは、3.1.で説明した特許権に基づく技術移転活動、3.2.で説明したその他の知的財産権に基づく技術移転活動、3.3.で説明した共同・受託研究活動について、経産省調査で収集した2015年度実績、昨年度調査で収集した2016~2018年度実績、ならびに本調査で収集した2019年度実績をもとに、当該5年分の経年分析を行った結果を示す。
なお、研究開発法人については、収集した2018年度実績と2019年度実績の2年分のデータを使って経年分析を行った。そのため、2016~2017年度実績については、大学の実績のみに基づいて近似直線が表示されている点に留意されたい。


3.4.1. 特許権に基づく技術移転活動_経年変化

図表29は、各大学の特許保有件数あたりの実施許諾または譲渡を行った特許権利数の経年変化を散布図で示したものである。これを見ると、特に特許保有件数1,000件以上の機関において、特許保有件数の増加に伴い実施許諾・譲渡の権利数が増加傾向にあることが分かる。

図表29 「特許保有件数」と「実施許諾または譲渡した特許権利数」との対比(経年変化)
「特許保有件数」と「実施許諾または譲渡した特許権利数」との対比(経年変化)

*特許保有件数が他機関に比して大きく異なる機関のプロット(10,310 ,3,054)(2019年度実績)は除いて図示

図表30は、図表29の縦軸を「特許権の活用による収入(特許権の実施許諾または譲渡による収入)」に替えたものである。図表30において、特許保有件数1,000件以上の機関において、特許保有件数の増加に伴い実施許諾・譲渡による収入が、一部の機関を除いて増加傾向にあることが分かる。

図表30 「特許保有件数」と「特許権の活用による収入」との対比(経年変化)
「特許保有件数」と「特許権の活用による収入」との対比(経年変化)

*特許保有件数が他機関に比して大きく異なる機関のプロット(10,310 ,619,131)(2019年度実績)は除いて図示

次に、特許権の活用による収入の経年変化を、特許権の実施許諾収入と譲渡収入に分解して比較した。図表31は、図表30の縦軸で示した「特許権の活用による収入」を、さらに実施許諾収入と譲渡収入に分解して示したものである。これを見ると、図表29で傾きが大きい機関は、「特許権の活用による収入」の多くを実施許諾により得ており、その傾向には大きな変化がないことが分かる。

図表31 「特許保有件数」と「特許権の実施許諾収入(左)/譲渡収入(右)」との対比(経年変化)
「特許保有件数」と「特許権の実施許諾収入(左)/譲渡収入(右)」との対比(経年変化)

*特許保有件数が他機関に比して大きく異なるプロット(左図は(10,310 ,595,436)、右図は(10.310 , 23,695))(2019年度実績)は除いて図示

図表32は、特許保有件数あたりの特許権の活用による収入(特許権の実施許諾または譲渡による収入)の経年変化を示した散布図と、技術移転関連に要した費用あたりの特許権の活用による収入(特許権の実施許諾または譲渡による収入) の経年変化を示したものである。これから、特許収入の推移と投入コストとの間の関係を見ることができる。

図表32 特許権の活用による収入に関するコストパフォーマンス(経年変化)
特許権の活用による収入に関するコストパフォーマンス(経年変化)

*技術移転関連に要した人件費とは、産学連携本部、リエゾンオフィス等産学連携・技術移転を主な業務とする部署において、当該業務に従事する者(派遣社員・有期雇用員を含む)の人件費のうち、技術移転関連の業務に従事する者の人件費である。また、共同・受託契約関連業務との兼務者の場合は、2019年度の全勤務時間のうち、技術移転関連業務と共同・受託契約関連業務に従事した割合を適宜設定し、その割合に応じた人件費としている
*知的財産関連経費とは、知的財産の出願等費用、登録・維持費用、侵害調査・訴訟等費用、実施許諾または譲渡による収入のうち研究者・その他(部局等)に還元した額(発明補償金等)に関して、各機関が実際に負担した額のことを指す
*上図で特許保有件数が他機関に比して大きく異なる機関のプロット(上図は(10,310 ,619,131)、下図は(797,521 , 619,131))(2019年度実績)は除いて図示


3.4.2. その他の知的財産権に基づく技術移転活動_経年変化

著作権の実施許諾・譲渡権利数と、実施許諾・譲渡収入、及び有体物(マテリアル)の実施許諾・譲渡権利数と、実施許諾・譲渡収入については、機関により年々収入が増加しているところがあるものの、全体的な傾向としては読み取れなかった。


3.4.3. 共同・受託研究活動_経年変化

図表33は、共同・受託研究関連に要した人件費あたりの、民間企業との共同・受託研究契約額の経年変化を示したものである。これを見ると、共同・受託研究関連に要した人件費は増加傾向にあり、一部の機関は、傾きが大きく変化していることが分かる。

図表33 共同・受託研究関連に要した人件費あたりの民間との共同・受託研究契約額(経年変化)

共同・受託研究関連に要した人件費あたりの民間との共同・受託研究契約額(経年変化)

*共同・受託研究関連に要した人件費とは、産学連携本部、リエゾンオフィス等産学連携・技術移転を主な業務とする部署において、当該業務に従事する者(派遣社員・有期雇用員を含む)の人件費のうち、共同・受託研究契約関連の業務に従事する者の人件費である。技術移転関連業務との兼務者の場合は、2019年度を通じた全勤務時間のうち、技術移転関連業務と共同・受託契約関連業務に従事した割合を適宜設定し、その割合に応じた人件費とする。また、「共同・受託研究契約関連業務」には、科研費申請書の代理作成等に従事する時間等は含んでいない
*共同・受託研究関連に要した人件費が他機関に比して大きく異なる機関のプロット(490,496 , 113,508)と(726,909 , 438,185)(2019年度実績)は除いて図示
*一部の機関は、共同・受託研究関連に要した人件費を0と回答したため、そのまま図示

3.3. と同様に、共同・受託研究関連に要した人件費あたりの民間企業との共同・受託研究契約額を、①民間企業との共同・受託研究獲得件数あたりの民間企業との共同・受託研究契約額と、②共同・受託研究関連に要した人件費あたりの民間企業との共同・受託研究契約件数の要素に、分解して考える。
図表34は、①民間企業との共同・受託研究獲得件数あたりの民間企業との共同・受託研究契約額(左図)と、②共同・受託研究関連に要した人件費あたりの民間企業との共同・受託研究契約件数(右図)の経年変化を示したものである。これを見ると、一部の機関は、傾きが大きく変化していることが分かる。

図表34 民間企業との共同・受託研究獲得件数あたりの共同・受託研究契約額(左図)、共同・受託研究関連に要した人件費あたりの民間企業との共同・受託研究契約件数(右図)(経年変化)

民間企業との共同・受託研究獲得件数あたりの共同・受託研究契約額(左図)、共同・受託研究関連に要した人件費あたりの民間企業との共同・受託研究契約件数(右図)(経年変化)

*右図のうち、共同・受託研究関連に要した人件費が他機関に比して大きく異なる2機関((490,496 , 39)と(720,969 , 217))(2019年度実績)は除いて図示
*共同研究関連に要した人件費を0と回答した機関は、傾きが大きい機関としてカウントしない

4.資料

上記の報告は以下のリンクより PDF ファイルとしてダウンロードできる。

外部資金獲得に関する生産性の分析

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