大学・研究開発法人等の外部資金・寄付金獲得の見える化 産学官連携拠点を通じた外部資金の獲得状況の分析
1. 「見える化」の目的
「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」(2016 年 11 月 30 日付、以降は「ガイドライン」という)において、組織対組織の体制の本格的な共同研究推進のため、各法人が共同研究の大型化を達成するとともに、人件費の獲得や必要な間接経費の獲得の重要性が指摘されている。2020年度「産学連携活動マネジメントに関する調査」(以下「本調査」)ならびに2019年度「産学連携活動マネジメントに関する調査」(以下「昨年度調査」)では、上記のような背景のもと、大学等のキャンパスにおいて、産学官連携によるイノベーション創出を推進する拠点として施設整備を行ってきた拠点整備事業を対象に、民間企業からの外部資金の獲得状況(2018~2019 年度実績)の特徴を把握・分析するとともに、特色のある拠点を抽出することで、新たな政策立案の参考とすることを目的として調査を実施した。
上記ガイドラインが制定されて 4 年が経過し、そこで示されている本格的な共同研究には大型化の達成だけではなく、費用負担の適正化等に基づく人件費の獲得や間接経費等の獲得が重要であるという点について、各拠点の状況を調査した。
2. 「見える化」の手法
2.1. 調査の概要
調査手順
下記の手順に従って、本調査を実施した。
調査項目の検討/調査票作成 | ・令和2年度「産学連携活動マネジメントに関する調査」をベースに、内閣府と協議、調査対象機関へのヒアリング等により調査 ・分析項目を決定。 ・決定した調査項目に基づき、調査票のExcelファイルを作成。 |
アンケート調査の実施 | ・調査対象機関の各窓口との連絡調整・事前説明を実施した上で、調査票を配布。 ・期日までに調査票を回収できるよう、問合わせ対応、各機関への回答の督促等を実施。 |
調査結果の集計・分析 | ・本調査で収集した各機関の回答データを集計。集計結果に異常値・誤りと思われるデータが含まれる場合は、各機関への確認を実施。 ・事前に検討した分析項目に基づき、本調査で収集した令和2年度実績の分析、ならびに過去調査で収集したデータと合わせた経年分析を実施。 |
調査結果の可視化・共有等 | ・内閣府のエビデンスシステムに格納可能な形式にて、集計・分析結果を可視化するBIツールを作成。 ・BIツールでの可視化結果をもとに、調査対象機関にフィードバック、ならびに産学連携の更なる発展に必要なエビデンス(データ)に関するヒアリングを実施。 |
図表 1 実施内容 ※本項目は令和3年度のみ実施
調査対象
調査対象は、文部科学省・経済産業省による拠点整備事業で整備された拠点のうち、大学・研究開発法人が事業主体となり、施設・設備の両方、もしくは施設のみを整備した拠点である。具体的には、下記事業で整備された 69 拠点のうち、52 拠点である(金額は事業単位の予算)。
- 文部科学省「地域資源等を活用した産学連携による国際科学イノベーション拠点整備事業(2012 年度・50,000 百万円)」:15 拠点(うち、調査対象 13 拠点)
- 文部科学省「地域科学技術実証拠点整備事業(2016 年度・15,000 百万円)」:22 拠点(うち、調査対象 16 拠点)
- 経済産業省「産業技術研究開発施設整備費補助金(先端イノベーション拠点整備事業)(2008・2009 年度・17,600 百万円)」:19 拠点(うち、調査対象 13 拠点)
- 経済産業省「イノベーション拠点立地支援事業(「技術の橋渡し拠点」整備事業)(2010 年度・12,000 百万円)」:11 拠点(うち、調査対象 8 拠点)
- 経済産業省「東北地方における新たな産学官連携の枠組みの構築事業(2011 年度・1,500 百万円)」:1 拠点(うち、調査対象 1 拠点)
- 経済産業省「福島県における先端 ICT 実証研究拠点整備事業(2013 年度・800 百万円)」:1 拠点(うち、調査対象 1 拠点)
2.2. アンケート調査の実施
調査項目の検討・調査票の作成
「民間企業からの外部資金の獲得状況(2019 年度実績)の特徴を把握・分析するとともに、特徴的な拠点の具体的な取組み内容を把握する」という本調査の目的に照らして、各拠点の概要と、外部資金の獲得状況・獲得方法について基礎的な情報を一定程度まで網羅的に把握できる調査となるように調査項目を検討して実施した。実際の調査票については以下を参照。
アンケート調査の実施(調査票の送付・回収)
調査は 2020 年 8 月 28 日に調査票を配布し、同年 10 月 9 日を提出期限として実施した。一部機関については同提出期限までには提出がなかったが、その後督促等を行うことにより、最終的には調査対象となった全 52 拠点から調査票の提出があった。
調査実施体制
本事業は、内閣府(科学技術・イノベーション担当)から野村総合研究所(NRI)が委託を受け、一部業務を大学技術移転協議会(UNITT)に発注をした。
資料「産学官連携拠点を通じた外部資金の獲得状況の分析(2021年4月)」からの抜粋
3. 「見える化」の結果
3.1. 分析対象拠点(2019年度実績)
調査回答のあった 52 拠点のうち、施設もしくは施設・設備を整備しており、かつ 2019 年度末時点で学外機関の入居を認めていた拠点は、47 拠点あった。以降の分析は 47 拠点を対象として実施した。尚、拠点名を公表しないことを前提に産学連携評価指標データを収集しているため、本一般公開サイトでは、各結果において拠点名は番号表記としている。一方、自拠点よりパフォーマンスが優れている拠点の取組事例等を参考にし、産学連携活動の改善を行うためには、各拠点の実名を表記したデータが必要になる。そのため、本調査に協力した拠点には、別途、各拠点の実名を表記したデータを可視化分析ツールで確認できるようにしている。
3.2. 1件あたり民間との共同研究費(2019年度実績)
各拠点における1件あたり民間企業との共同研究費を示したものである。47拠点中31拠点が自機関全体の水準より大型の共同研究を実施し、うち17拠点は、1件あたり1,000万円以上の共同研究を実現している。
3.3. 共同・受託研究より獲得した人件費(共同・受託研究1件あたり)(2019年度実績)
3.4. 間接経費比率(2019年度実績)
各拠点における間接経費比率を示す。間接経費を学内基準よりも高く設定しているのは 4 拠点のみ。
3.5. 施設利用収入(2019年度実績)
拠点における学外機関の入居面積あたりの施設利用料収入、ならびに施設利用収入が民間企業との共同研究費に占める割合を示したものである。学外機関の入居面積あたりの施設利用料収入、民間企業との共同研究費に占める割合がともに高水準な拠点は無い。
3.6. 設備・サービス利用収入(2019年度実績)
各拠点における学外機関の入居面積あたりの設備・サービス利用料収入、ならびに設備・サービス利用料収入が民間企業との共同研究費に占める割合を示す。1拠点で、学外機関の入居面積あたりの設備・サービス利用料収入、共同研究費に占める割合ともに高水準である。
資料「産学官連携拠点を通じた外部資金の獲得状況の分析(2021年4月)」からの抜粋
3.7. 特徴的な取組みを行なっている拠点例
資料「産学官連携拠点を通じた外部資金の獲得状況の分析(2021年4月)」からの抜粋
- 3.7.1. メディカルイノベーションセンター棟(京都大学)
- 3.7.2. 「スマート・ライフサポート・イノベーション拠点」(早稲田大学)
- 3.7.3. 産学連携先端材料研究開発センター(東北大学)
- 3.7.4. 窒化物半導体マルチビジネス創生センター(名古屋工業大学)
- 3.7.5. 次世代燃料電池産学連携研究センター(九州大学)
- 3.7.6. 有機エレクトロニクスイノベーションセンター(山形大学)
3.8 参考
資料「産学官連携拠点を通じた外部資金の獲得状況の分析(2021年4月)」からの抜粋
4.資料
上記の報告は以下のリンクより PDF ファイルとしてダウンロードできる。
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